先日開催したレベル3のテーマは胸郭出口症候群のアプローチでした。
関節被膜の中で唯一伸びるのは皮膚です。
したがって骨を思い通りに動かすためには皮膚のコントロールが必要不可欠です。
セミナーにご参加いただいた協会員の皆様。
改めて大変な中ご参加いただきありがとうございます。
今回のセミナーで、皮膚のコントロールをマスターできて初めて「関節ニュートラル整体」のテクニックを自在に使用できることがご理解いただいたことでしょう。
頚肩腕症候群や胸郭出口症候群、前斜角筋症候群といった症状は回復までに最低3か月、最長で2年の長い期間を要します。
患者さんはもちろんセラピストにとっても非常に難しい症例だといえるでしょう。
これらの症例は、大別すると80パーセントが1年以内で症状が改善します。
言い換えると約半年は悪化の一途をたどり、残りの半年で回復に向かうという事です。
稀に回復までに2年の期間を要するケースがあります。
このようなケースの患者さんは、MRIの検査まで受けているケースが大半です。
セラピストにとって大切な知識は、あくまでもケガは時間で治るという事を肝に銘じることではないでしょうか。
言い換えると、この期間を短縮することはできないという事です。
患者さんに対する論理的な説明をするうえでも正確な情報にアプローチすることが重要です。
巷にあふれている情報の90パーセントはいわゆるゴミ情報であるという事を知るべきです。
日本では毎年138万人の方がお亡くなりになっています。
その内訳はがんが38万人、心臓病が20万人、肺炎が12万人、脳血管疾患が10万人です。
そのうち毎年100万人お亡くなりになる世代があります。
さて何歳でしょうか?
この質問に80代と即答できない方は数字で考える習慣を持ちましょう。
縦,横、算数(数字、ファクト、ロジック)で考える習慣が大切です。
脊椎の手術の専門医(ベストドクターまたは学会の認定医)の診察を受けることでセラピストの適応範囲であるかそうでないかがわかります。
もしそのような手順を踏んでいないケースであれば、検査と調整が一体となった、関節ニュートラル整体の施術を受けることで適応であるか否かがわかります。
そこで注意することは急性期が過ぎていたうえでの施術であるべきなのです。
医学的には手術を要するケースではない事がわかっていれば患者さんはもちろんセラピストも安心して施術を試すことができるのです。
考えて、考えて、考え抜いて、最後によりどころになるのは経験に裏打ちされた勘に頼るのは悪くはない選択といえるでしょう。
頸椎の調整は次の4パターンの関節の遊びから構成されています。
1,後方から前方の回旋の遊び
2、前方から後方の関節の遊び
3、回旋の遊びをなくした後の斜め下方の前屈の遊び
4,1,2,3、の動きをなくした後の斜め側方の遊び
このように斜め下の関節の遊びの検査と調整は4パターンに作業分解できます。
その動きが十分にできない方は斜め上に頸椎及び頭が過剰に動きすぎる結果、胸郭出口症候群という症状が起きるのです。
前屈すると頚髄が14センチまで伸びます。
反対に後屈すると9センチまで縮みます。
このような理由で斜め下の動きを正常にすることで頚髄が最大限に伸びるので回復を助けることになるのです。
手術の必要性が認められないケースは、血栓予防薬(血液がサラサラになる薬)が出ることがあります。
繰り返し起こる寝違えの症状が改善されるのです。
この薬は年齢が40歳以上でかつ血圧が上昇しているケースに処方するのがルールです。
また最短で1か月で神経が引き締まることで痛みが改善する薬(ノイロトロピン)が処方されるケースもあります。
脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアで苦しむ患者さんで手術以外では改善しないケースと断定できない方に処方されるお薬です。
80パーセントの患者さんが3か月で症状が改善します。
そして残りの20パーセントが6か月で症状が改善するのです。
私は46年の臨床経験で急性期の症状が1か月で激減するケースを数多く見てきました。
その理由は神経がやせて引き締まることで圧迫が取れるのではないかと考えています。
このように自然な回復が起きないケースにおいても、消炎鎮痛剤に加え、血栓予防薬やノイロトロピンが利くケースはおそらくそのようなメカニズムで症状が改善するのではないかと考えられます。
いずれのケースにおいても関節の柔軟性と支持性が限界まで改善しない限り根本改善することは不可能です。
大切なことは全身の関節の柔軟性と支持性を限界まで改善することなのです。
それが手術の前であればベストな選択でしょう。
その理由は全身の関節の調整をすることで症状が改善するケースは、手術をするのがベストなタイミングではないからです。
脊椎の手術が高度に発達した現在であっても、完治率はわずか20パーセントなのです。
何事もベストなタイミングがあるのです。
私の経験では95パーセントの患者さんが適切な関節の弾力を改善する調整で改善し再発もありません。
勿論手技療法で改善する見込みがないケースを見極める技量がないとこのような高確率を維持することはできません。
考えてみると当たり前のことですが、セラピストの多くはケガは時間の経過で改善するという事実を知らない方が多いのです。
回復までに3か月を要するケースの急性期は1か月、亜急性期が1か月、慢性期が1か月という事になります。
私が苦心の末考案した関節ニュートラル整体は関節被膜を整えることが確実にできる全身の保守点検システムです。
重要な事なのでもう一度繰り返します。
関節被膜の中で皮膚だけが伸びる組織です。
どんなに関節ニュートラル整体の組み手を覚えたとしても、それがわからない限りこの技術の奥義に到達することは不可能です。
始めたころの素直な気持ちに帰って、すべては回復可能でありながらそれができないで苦しむ患者さんのためにさらなるレベルアップを共に目指そうではありませんか!

