最近感銘を受けた本に「宮大工と歩く奈良の古寺」小川三男著、塩野米松聞き書き(文春文庫)と言う本が在ります。

この本の著者は奈良の法隆寺に修学旅行で出かけて感銘を受けたそうです。

まったく大工に無縁の家柄でしたが、「こんなにすごい建築物を作れる宮大工になりたい」と強く思ったのでした。

当時法隆寺の3代目棟梁であった、西岡常一氏に入門を許されたのがそれから4年後でした。

本格的な修行開始は22歳を過ぎていました。

しかしながら棟梁の教えを忠実に守りました。それは、

「修業時代は本も新聞も読まなくていいからひたすら刃物の研ぎを身につけろ」というものです。

小川氏が寝る間も惜しんで刃物を研ぐ姿を見て、棟梁は「これはモノになるかも知れん」と思ったそうです。

このくだりは「木のいのち木のこころ」天、地、人(草思社)に詳しく書かれています。

棟梁の西岡氏の話によると、小川氏は普通は20年かかる宮大工の仕事をわずか5年で極めたそうです。

もしあらかじめ知識があったとしたらそれが邪魔をして感動しなかったかもしれません。

やがて師匠の下から独立し、宮大工を育成する集団である鵤工舎を率いて活躍しました。

その理由は,法隆寺の次の仕事は300年後ということもあったと思います。

せっかく身につけた技術を伝承するためには現場が必要不可欠です。

そこで歴史をさかのぼって様々な神社仏閣の再建に携われる立場となったのでした。

残念ながら、小川氏は平成11年に現役を引退しているそうです。

昭和22年生まれということなのでまだ66歳です。

しかしながら巨木を扱う宮大工としては、指導はできるものの現役生活はそんなに長くないのでしょう。

私が手技療法とリハビリテーションの応用発展形と言える関節ニュートラル整体を考案出来たのは、様々な偶然が在りました。

失意のどん底にあった十代の時に、GLAの代表であった、高橋信二氏の著作をすべて読んでいた事もきっかけになったとおもいます。

度重なる事故の後遺症で、全身のしびれに悩まされました。

十七歳から始まった症状が、まさか40歳まで続くとは思いもよりませんでした。

人を救うことができるセラピストになりたいと思い、カイロプラクティックをマスターするために6年の修業をしました。

しかしながら定期的に襲う全身のしびれはいっこうに改善しませんでした。

患者さんを真剣に治療しながらセラピストとして修業を開始してから20年が過ぎました。

当時の日本でも数少ない、モーションパルペーション&マニュピュレーション(動的触診法と手技療法】の進化発展形を武器に開業して順調でした。

その時に人生をもう一度考える悲劇が起きました。

それが放火による自宅の全焼火災でした。

このことがきっかけでそれまで他力本願的になっていた考えを改めました。

成田山の新勝寺の大教上の位を持つ修験者に改名して頂きました。

自宅の家相もアドバイスに従ってみていただき、新築してわずか4年で全焼してしまったのです。

本当に混乱しましたが家族全員が無事であったことはまさに不幸中の幸いでした。

その翌年に神戸の大震災が起きました。

瓦礫となった我が家を片付けながら深く人生を考えました。

「災難の原因はすべて自分にある。他力本願を捨て自分を変えなければ」

こう考えなければどうしようもない状態でした。

私の窮状を見た友人の勧めで、東京で今まで培った技術を教えるセミナーを開きました。

その中で考案したのがPNF整体です。

PNFを応用して体の歪みを取り除く画期的な発見でした。

ところがいつまでたっても自分が日の目を見ることはありませんでした。

そこで思い切って独立し、港区高輪の財界二世学院で関節ニュートラル整体のセミナーを開始しました。

やがてセミナーの会場を銀座に移し、現在のレベル2のテクニックが誕生したのでした。

そのあとにさらに東京駅の八重洲口のブリヂストン美術館の隣のビルに移り,技術はさらに改善し進化発展を遂げました。

耐震強度が阪神淡路大震災級の基準に不適格とされビルが取り壊される関係で現在の文京区水道橋に移転しました。

関節ニュートラル整体の技術はもうこれ以上進化しないだろうと思いましたがそれは大きな間違いでした。

それからも毎年進化発展を遂げているのです。

関節ニュートラル整体のニュートラルという言葉は、お釈迦様が到達した八正道と中道という悟りの境地の考えから導かれました。

奈良の法隆寺は、千三百年前に仏教で国を治める目的で建立されました。

驚くことに当時の奈良の都に住む人の八割は外国人だったそうです。

当時の技術者はそんなに多くはなかったはずです。

したがって修行する時間などありません。

現在のように便利な道具や重機も全くない時代にわずか七十年で完成しているのです。

それを考えても仕事は単なる技術ではないと思います。

大切なことは櫃人の役に立ちたいという気持ちを継続することではないでしょうか。

私は関節ニュートラル整体のセミナーをお金儲けを目的で開催しているのではありません。

もう一度言います、仕事は技術だけではなく魂なのです。

魂を込める仕事をともに学びませんか?